お願いします。忘れさせて下さい!



「…!」


「…。」


どうやら今僕は叫んだようだ。


えらく他人事な自分の感覚に笑いさえ漏れる。

叫んだ声は本音であり本音じゃなかった。

彼は驚いた顔をしたあと、いつも通りの表情に戻った。


なんでこんなに冷静なんだと身勝手にも責め立てたくなるほどに
その顔はいつも通りだった。


「…冷静ですね。」

「慌てふためいたところでお前が言った事は変わらんからな。」

「…。」



「お前何を忘れたいわけ?」

「え。」



彼から返ってきた質問に一瞬固まる。



そういえば目的語が抜けていたな。



「オレはお前に何か覚えろと強要した覚えはないし、忘れさせろと言うのは無理だ。
記憶抹消光線が出せるわけでもない。」


「光線て…古くないですか。」


「知るか。」



「ふふ、すみません…そうですね、無理な話です。」

「だろ。一番確実なのはハルヒだがな。
ハルヒに「忘れさせたい」って思わせたら結構高確率じゃねえか?」


「…っ。」


「やってみたら「嫌です。」」



…なんだ答はもうでてるのか。



「やっぱ答決まってるじゃねえか。」

「…参りました。」


ホントに参ったな。

最初からお見通しだったようだ。



「いきなり忘れたいなんて言うな。
…その時は俺もお前なんか忘れてやる。」

「え…。」



背を向ける瞬間少し目元が光っていた。

僕は気付いたら彼を抱きしめていた。



もう忘れたいなんて思うものか。


こんないとしいものを忘れるなんて
できるはずもない。





end



片想い古泉のぐるぐる…実は両想いという感じです。
人は忘れる生き物ですが忘れない生き物でもありますね。(意味不明)


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